「この兄ちゃんは、生きて帰られへんな。」
そう雀荘のオヤジはつぶやいた。
こいつは今夜、いったいいくら負けてるのだろうか?
もうあとは起死回生の役満でも上がらない限り、まともな姿で帰れそうに無い。
― 最後の局 ―
積まれた牌の山から配牌を持ってくる。
オヤジは心配そうにその男の手牌を覗き込んだ。
「あかん、駄目や。」
てんでバラバラ、一枚も同じ牌が無・・・、
・・・ん?
待てよ?
こ、これはひょっとしたら?

「国士娘。13面待ち」
「娘。」牌の13枚を全種類集め、
あとは14枚目にどの「娘。」をツモってきてもあがれるという幻のダブル役満。
まさに一発逆転の大チャンス!
見ているオヤジも自分の手が汗ばんでくるのを覚えた。
「この兄ちゃん。ほんまぶっといツキを持っとるで。」
一巡目。
男はツモってくる指に力を込める。

「松浦」牌・・・。
駄目だ。
「兄ちゃんのツキじゃここまでか・・・。」
「娘。」牌でないとあがれないのだ。
あと一歩、あと一歩なのに。
「こんなのいるかよ!」
その男は牌を前に叩きつけた。
辺りに虚無な空気が漂った。
・・・無念そうに

「松浦」牌を見つめるオヤジ。
当然のように

「保田」牌を叩き捨てる「や な」さん。
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